20世紀のデザインを牽引した建築家、デザイナーのシャルロット・ペリアン。彼女の没後20周年を記念した回顧展が、パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンで開催されている。日本との関係も深い彼女の作品世界、現地でぜひ体験したい。

境界なき世界を先見した、先駆者ペリアンのモダニティ

Crédit artiste : © Adagp, Paris, 2019 Crédit photo : © Fondation Louis Vuitton / Marc Domage

最終章「日本との対話」の展示室では、90歳の頃の仕事であるパリのユネスコ庭園内に建造された茶室が再現された。その骨組みは竹と傘だけで表現されている。
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 シャルロット・ペリアンの没後20年を記念した大回顧展が開催されている。20世紀デザインを牽引した建築家、デザイナーとして知られるペリアンは、1927年にル・コルビュジエらのアトリエに入所。彼らはのちにモダンデザインのアイコンとなる代表作をちりばめたインテリアをサロン・ドートンヌに発表し、脚光を浴びた。本展では、彼女が自らの現代の社会に直結する先見の明をもって「アール・ド・ヴィーヴル」の新しい形をつくり上げ、ピカソやレジェなど同時代のアーティストたちを緩やかに結びつけた“規格外”の女性であったことにフォーカスする。

© Adagp, Paris, 2019 © Fondation Louis Vuitton / Marc Domage
© Succession Picasso 2019 © Anne Chauvet
Crédit artiste : © Adagp, Paris, 2019 Crédit photo : © Fondation Louis Vuitton / Marc Domage
1 日本家屋の伝統的な畳のモジュールに触発された空間には、御簾のような蚊帳、名作の籐椅子、茶室の炉を思わせる設えのほか、子どもの絵を拡大したタペストリーが。 2 ピカソやレジェをはじめとする同時代のパリの芸術家たちとの親交が作品世界に反映されている。 3 ペリアンの提言するアール・ド・ヴィーヴルの世界観ではアートも家具も建築も生活のなかで融合される。

 本展のハイライトである《限りなく水に近い家》《シャルロット・ペリアンの山小屋》の再現展示に身体ごと没入すれば、ペリアンの知性と芸術が、人間が自然環境に向き合うべき立脚点、健康でサステイナブルな生活と社会、といった哲学に基づくことを実感できる。また彼女はアジアやブラジルなど多様な文化に対して開かれた精神をもち、常にその歴史的意義に敬意を払った。なかでも日本との関わりは深く、アトリエで同僚だった坂倉準三の推薦により、1940年に来日。輸出工芸指導の装飾美術顧問として全国を回り、日本のデザインに大きな影響を与えた。自身の作品にも、心打たれた竹などの素材や、民藝などから得た体験が息づいている。

 いまこの時代になぜペリアンの企画展なのか。「それは解決法を提示したのは彼女だけだったからです」と特任館長クラヴリー氏は語る。「何もないことの贅沢、と彼女が呼ぶミニマリズムの美学や、あらゆる境界を開放した自由な精神には、真に幸福な人間生活への提言が表明されています」

 政治や社会の分断と対立、地球温暖化と環境破壊という危機的時代を生きる私たちにとって、モダニティの先駆者ペリアンが毅然と示した世界観と彼女の器の大きさに勇気づけられ、前向きな意識改革を迫られる展覧会である。

Crédit artiste : © Adagp, Paris, 2019 Crédit photo : © Fondation Louis Vuitton / Marc Domage

フォンダシオン ルイ・ヴィトンの地下階に常設された人工滝を望む《限りなく水に近い家》の再現展示では、細部のすべてに健康なサステイナビリティの精神が宿る。ヒューマンスケールの小宇宙に身を置くことで実感する没入感は格別だ。
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シャルロット・ペリアン
シャルロット・ペリアン フランスの建築家、デザイナー。服飾職人の両親のもとに生まれ、多彩な素材に囲まれて育つ。1926年パリの装飾美術中央連合学校卒業。自身のアトリエから展覧会に家具を出品。27年サロン・ドートンヌに出展した《屋根裏のバー》が大反響を呼び、ル・コルビュジエのアトリエへ入所。彼らとともに数々の名作を世に送り出す。66年パリ日本大使館のインテリア設計。67年「レ・ザルク」スキーリゾートデザイン。93年パリ・ユネスコ庭園にて茶室設計。
「シャルロット・ペリアン:新たな世界への招待状」
会期:~2020年2月24日(月)
会場:フォンダシオン ルイ・ヴィトン(パリ)
8, Avenue du Mahatma Gandhi, Bois de Boulogne 75116 Paris
開館時間:11:00~20:00(金曜~21:00、土曜・日曜10:00~)
料金:一般€16

Text:Chie Sumiyoshi Editor:Kaori Shimura