理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

世界中を飛び回れるのも、シャンパーニュ造りの楽しみのひとつ

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〈左〉「デリエール・ムーティエ(Derrière Moutier)」のリューディにて、フレデリックさんと。 〈右〉フレデリックさんの祖父が植えたピノ・ノワールには凝縮感が感じられる。

 みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第17回は、シャンパーニュ地方の中心都市のランスから車で20分ほど、モンターニュ・ド・ランス地区の西側、プルミエ・クリュのエキュイユ村に位置する「フレデリック・サヴァール」を訪れました。こちらは比較的新しく、いま世界中から注目されるドメーヌとなっています。今回はその立役者でもある、3代目当主のフレデリック・サヴァールさんにお話を伺いました。

明日香:フレデリックさん、こんにちは。まずは、ドメーヌの歴史について教えてください。

フレデリック:当ドメーヌは私の祖父が第二次世界大戦後の1947年に始めたもので、1955年よりシャンパーニュの販売を始めました。
 2代目である私の父が祖父よりドメーヌを継いだのが1975年で、私自身は1992年に父と一緒に仕事を始めました。最初は父のサポートというかたちで仕事をしていたので、当時は「ダニエル・サヴァール」という名のドメーヌだったのですが、2005年に「サヴァール」に変更しました。ところが、別の“サヴァール”が存在していたので、私の名前である「フレデリック・サヴァール」をドメーヌ名に変更し、現在に至ります。

明日香:シャンパーニュの中では比較的新しいドメーヌですね。

フレデリック:そうですね。私でまだ3代目ですから、このあたりではかなり若いドメーヌです(笑)。明日香さん、今日はまず畑にご案内したいと思います。

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「プチ・モンターニュ・ウエスト」を見渡す風景。

フレデリック:(畑にて)いま、私たちが立っているこの畑は「デリエール・ムーティエ(Derrière Moutier)」というリューディ(小区画)で、私の祖父が植えた、このあたりでいちばん古いブドウ畑のひとつなんです。この畑のブドウは「エクスプレッシオン(Expression)というキュヴェのシャンパーニュになります。

明日香:フレデリックさんの畑は全体でどのくらいの広さがあるんですか。

フレデリック:いまは全体で4haほどありますが、もともと、祖父が始めたころはわずか0.2haしかありませんでした。現在、プルミエ・クリュのエキュイユ(Ecueil)村に3haの畑があって、80%がピノ・ノワール、20%がシャルドネです。残りの1haはヴィレール・オー・ヌード(Villers-aux-Nœuds)村にあります。

明日香:0.2haからのスタート! わずか3代で、すいぶん大きくなったのですね。

フレデリック:そうですね。私たちがいまいるのは、プルミエ・クリュの村が集まった場所で「プチ・モンターニュ・ウエスト」と呼ばれるエリアです。このエリアのほとんどにはムニエが植えられているんですが、エキュイユ村の土壌だけはピノ・ノワールが適しているので、ここではかなりの割合でピノ・ノワールが植えられているんです。
 また、エキュイユの南の土壌は大部分が砂質なので、幸運なことに接ぎ木が不要。さらにこの特別な土壌は、ピノ・ノワールの味わいにとてもよい影響を与えてくれます。例えば、パワフルなピノ・ノワールで有名なグラン・クリュの「アンボネ(Ambonnay)」や「ブージ(Bouzy)」と比較すると、フルーティさとフレッシュさのバランスが取れた、エレガントなピノ・ノワールになるんです。

明日香:畑仕事に関しては、どのようなこだわりがありますか?