妻とやり直すために何人もの愛人と別れることを決意した、リッチで優柔不断な編集者・田島。「妻の代役」を仕立てつつ二人で愛人たちを訪ねる作戦を立てた田島は、偶然出会ったとびきりの美女、キヌ子に話を持ちかけて雇う。だがよくも悪くも正直でアケスケ、ガサツで大食いのキヌ子に、田島はとことん翻弄されることに……。太宰治の未完の遺作をもとに、劇作家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が書き上げた傑作ラブコメディ『グッドバイ』。
2015年にKERA演出で初演され多くの賞を獲得した作品だが、今回は俳優としても活躍中の生瀬勝久が演出する新バージョンとなる。主人公の田島を演じるのは、朝ドラ「なつぞら」でのコミカルな演技も記憶に新しい俳優・藤木直人さん。田島に対しては「どれだけ自分がないんだ、と言いたくなる(笑)」と語る彼は、自身初の舞台でのラブコメディ、翻弄される男をどのように演じるのか?

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──初演の舞台はどんなふうにご覧になりましたか?

 こんなに笑う舞台があるんだ、というくらい、お客さんが笑っている作品でした。僕自身、すごく楽しみましたね。脚本自体が面白かったのもありますが、俳優の皆さんの笑いのスキルが高く、個々人の力量で笑いを取っている場面も多かったように思います。ただ演じるにあたっては、僕はこの作品を必ずしもコメディとはとらえていないんです。

──というと?

 僕が演じる田島は、自分から笑いを取りにいく役ではないし、構造として笑いが起きる脚本になっていますから、そこを強調して演じなくてもいいかなと。キャストもまったく新しくなっていますし、初演を意識しすぎずにやりたいと思います。初演で田島を演じた仲村トオルさんの「頼りないんだけど憎めない」という風情、快活さを出すのは大変だろうなとは思っています。

──今回演じる田島という人物に対しては、どのように思いますか?

 男性としての田島をどう思うか聞かれると、なかなかコメントしづらいですよね。時代もありますが、妻がいながら何人もの愛人と関係しているわけですから。さらに急に「正妻と家庭を大事にしたい」と決心して、でも愛人との別れ方が分からずに、他人のアイディアをそのままもらって、別人を妻に仕立てて愛人のもとを訪ねてゆく……。「どれだけ自分がないんだ」って言いたくなりますよね(笑)。
 まあ、太宰さん自身、自分の恋愛遍歴に重ねて、反省みたいな思いもあったのかもしれません。

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──妻の代役を引き受けるキヌ子というキャラクターに関してはどうでしょうか?

 原作には「見た目は美人でカラス声、ガサツで部屋は汚れ放題」とあるんですが……(笑)。初演では小池栄子さんがそういう部分をデフォルメして怪演されていて、面白かったですよね。

──彼女とのコンビネーションで、田島という男が可愛く見えた気もします。

 キヌ子に振り回されっぱなしですよね。男女が平等でない時代が舞台ですから、今の僕らが見ると、田島の彼女への対し方には「どうなんだろう?」と思うことも多いんですが、だからこそ、キヌ子がきっぱりと肘鉄をくらわすのが気持ちいいですよね。

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