――日本ワインは、海外で造られるワインとどう違うのですか?

 造っている人の顔が見える、話が聞けるということでしょうか。たとえば家庭料理もそうですが、味わい同様に、誰が造ったかも大きな要素ですよね。ワイン造りの過程にはさまざまなプロセスがあり、それぞれにストーリーがあります。言葉が通じる生産者の思いをダイレクトに感じられるのが、日本ワインの魅力のひとつだと思います。

――日本ワインを選ぶ際のポイントは?

 日本ワインの場合、おいしいものを選ぼうと思うなら、値段を基準にしないほうがいいと思います。栽培も醸造も発展途上の部分が多く、生産本数や人件費などで価格が左右されるからです。海外の銘醸地のように、特級や一級といった畑による格付けが存在しないので評価も一定しないですし、少量生産ゆえに、味わいに比較して割高なものも見られます。自分の好みのものをすすめてくれるワインショップを見つけて、スタッフにおすすめを聞くのがよいでしょう。
 ワインショップが近くにない方は、毎年行われる「日本ワインコンクール」の受賞ワインを選んでみるのもいいかもしれません。僕も審査員として毎年参加していますが、ブラインド(銘柄や値段がわからない状態)でテイスティングするため、価格の割にオッと思うものに出合えます。気に入ったものがあれば、今度は同じ生産者のワインを選ぶとよいでしょう。料理でいうシェフと同じで、腕のよいワイナリーは、どんな品種でもきちんとおいしく造るものです。

今飲みたい、日本ワインを教えてください!

山梨のグランクリュ クオリティ


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ワイン/シャンテY, A Huit(結ひ) 2016¥5,000
生産者/ダイヤモンド酒造 (山梨・勝沼)
TEL :0553-44-0129 http://www.jade.dti.ne.jp/~chanter/
品種/マスカット・ベーリーA100%

「マスカット・ベーリーA という品種を、うまい!と思ったことは実は少ないのですが、これはその中でも僕の『2018 年マスカット・ベーリーA 大賞』を受賞した 1本です(笑)。値段もプレミアムなのですが、それを裏切らないことは僕が保証します」(井黒さん)
 ダイヤモンド酒造は山梨・勝沼の老舗ワイナリー。ボルドーやブルゴーニュで栽培や醸造を学んだ3代目の雨宮吉男さんは、日本を代表する赤ワイン用ブドウのマスカット・ベーリーAに着目。8番目に造ったという意味でフランス語の8の意味のHuitと命名。選りすぐったブドウの完熟を待ち、旨み成分をゆっくりと抽出させたあとにオーク樽で24カ月という長い熟成期間を経てリリースされる。


“センス オブ プレース”を感じさせてくれる1本

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ワイン/シャルドネ 樽醗酵¥3,000(※現在は完売)
生産者/山崎ワイナリー(北海道・三笠)
TEL:01267-4-4410 http://www.yamazaki-winery.co.jp/
品種/シャルドネ100%

 「北海道のポテンシャルを感じた初めての1本。このポテンシャルとは“テロワール”、つまり英語でいう Sense of place(その場所を感じさせてくれる)を表現しているワインということ。北海道の厳しい冬を連想させるような、ピリッとしたシャープな酸。それでいて香りはシャルドネ由来の華やかさもあり、ワインを飲み慣れている方にぜひおすすめしたいワインです」(井黒さん)
 ブドウ栽培から醸造、瓶詰めまですべてを自ら行う家族経営のワイナリー。現在は長男の山崎亮一さんが醸造を、次男の太地さんが栽培を担当。「シャルドネ 樽醗酵」は、収穫した房の茎や小さな枝を除去せずにそのまま仕込むことで風味と深みを持たせ、さらに発酵、熟成ともにオーク樽を使ったコクのある白ワイン。 ※2016年ヴィンテージは早々に完売、2017年ヴィンテージが同価格で2019年春にリリース予定。

いつもの食卓にこれがあればちょっと贅沢な気分になれる

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ワイン/テーブルトップ デラウェア 2018 ¥2,000
生産者/清澄白河フジマル醸造所(東京・清澄白河)
TEL:03-3641-7115 https://www.facebook.com/kiyosu
mishirakawa.fujimaru/
品種/デラウェア100%

「あえて完熟する前に摘んだ⻘いデラウェア、通称“⻘デラ”から造られるこちらは、まさに日本の食卓に寄り添う1本。たとえば週末の金曜日、いつもより1品多く準備した夕食に。甘くトロピカルな香りがありつつも、味わいはキリッと辛口。味噌や醤油を使った和食はもちろん、餃子や麻婆豆腐などにも合います。油っこい料理も、レモンのような酸味が口の中をリセットしてくれますよ」(井黒さん)
 都市型ワイナリーの先駆け、大阪のフジマル醸造所が2つめにオープンしたワイナリー。レストランを併設し、造りたてのワインを樽から飲める点も話題。「テーブルトップ デラウェア 2018」は種なしデラウェア果汁に、青さを残したフレッシュなデラウェアをブレンドして醸造。親しみやすい味わいで価格もフレンドリー。2019年3月頃まで販売、なくなり次第終了。

井黒 卓/Taku Iguro
銀座「ロオジエ」ソムリエ。
井黒 卓/Taku Iguro 第8回全日本最優秀ソムリエコンクール準優勝、A.S.I.アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール2018 4位、他にもコンクールの入賞経験多数。日本ソムリエ協会の執行役員としてプロを対象としたさまざまな教育と指導に当たるほか、数々のワインコンクールやアワードの審査員やテイスターも務める。ワインのプロとしての確固たる自覚と自尊心をもつ、若きソムリエのリーダー的存在。2018年11月にCourt of Master Sommeliers AmericasのCertified Sommelierに認定される。
Photo&Text: Hiromi Tani