明治や大正、昭和初期に建てられた建造物には、現代の建物とは異なる魅力がある。DJ、モデル、ファッションデザイナーとして多彩な顔を持つMademoiselle YULIA(マドモアゼル・ユリア)が、そんな近代建築をナビゲート。今回は、目黒のホテル雅叙園東京の中にある東京都指定有形文化財、「百段階段」を訪れた。

MADEMOISELLE YULIA
東京生まれ。DJやシンガー、モデル、ブランド“Growing Pains”のデザイナーとして活躍。国内外のコレクションのフロントロウを飾る、ファッションアイコンとしての顔も持つ。また、2018年4月から大学で日本の伝統文化について学んでいる。大正時代や歌舞伎、着物などに造詣が深い。http://yulia.tokyo/yulia/

“竜宮城”とも称された華やかな装飾の数々

 東京都指定有形文化財に指定されている「百段階段」は、ホテル雅叙園東京の前身である目黒雅叙園の3号館として、1935(昭和10)年に建てられた。99段の階段廊下で繋がっているのは、会食や婚礼などハレの日を楽しむ場として親しまれた7部屋。現在では企画展の場所として利用されることが多いが、ホテル雅叙園東京の歴史をつぶさに見てきた証人でもあるこの場所の、装飾美を紹介したい。

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創業者、細川力蔵が芝浦で始めた料亭がルーツの雅叙園。目黒開業後につくられた百段階段は、“昭和の竜宮城”と呼ばれたほど絢爛豪華な装飾。ユリアさん私服の振袖姿でより一層艶やかに。

 まず圧倒されるのは、ホテルエントラス脇にある百段階段へと誘うエレベーター。47人も乗ることができる大きなエレベーターの壁にはすべて螺鈿細工が施されている。煌びやかな出迎えを受け、いざ百段階段へ。「十畝(じっぽ)の間」「漁樵(ぎょしょう)の間」「草丘(そうきゅう)の間」「静水(せいすい)の間」「星光(せいこう)の間」「清方(きよかた)の間」「頂上(ちょうじょう)の間」の7部屋を順に巡っていくのだが、「漁樵の間」と「頂上の間」を除く部屋は、絵を手がけた日本画家の名を冠しているという。

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ぐるりと螺鈿細工が囲む巨大エレベーターは、まるでタイムトラベルの入り口。
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橋本静水(はしもと・せいすい)の屏風が原画となった唐獅子牡丹が圧巻。通常は木に施す螺鈿細工を、金属製のエレベーター用に特殊な工法で実現。