今年4月のウィフレド・ラム現代美術センター(キューバ・ハバナ)での展示風景より。〈左〉グレンダ・レオン《Air from Tokyo》2017年。未知の東京との「距離」を東京のリアルタイムの風力で示す。詩的なコンセプチュアルアートで知られるグレンダはキューバを代表する作家のひとり。〈右〉持田敦子《Further you go, you may fall or you may learn》2018年。 美術館裏庭のプライベートとパブリックの境界に仮設の螺旋階段を設置し、その異物感によって空間のバランスや質に揺さぶりをかけた。Photos: Luis Joa

 展覧会に話を戻すと、そんなキューバ社会に生きるアーティストたち4名の作品のいくつかは、ありふれた日用品や廃品などの素材で構成され、創意工夫と機智に富んでいた。革命後のキューバ国民にとっての「物(オブジェクト)」のもつ意味は、西側の消費社会とは対極にあり、欧米中心の現代美術史におけるデュシャンの「レディメイド」とは明らかに違う概念である。リサイクルが「意識の高い証し」でなく生存手段であるキューバ社会では、中古品は近代から現代に至る歴史を語る「キューバの現実」なのだ。

 日本の作家の異文化へのアプローチと、キューバの作家たちの歴史観や問題意識に触れた本展は、なぜいまキューバが世界の注目を集めるのか、その理由を体験的に考えるきっかけを与えてくれた。芸術はもちろん、わずかだが垣間見たキューバの社会と生活文化は、戦後の西側世界の明暗と閉塞を見てきたからこその、“大人の”カルチャーショックをもたらし、帰国後も人間にとっての「豊かさ」の本質を問いかけてくる。


「近くへの遠回り-日本・キューバ現代美術展」帰国展
会期:6月6日(水)~6月17日(日) 11:00~20:00 無休
会場:スパイラルガーデン(東京都港区南青山5-6-23 スパイラル1F)
入場料:無料
主催:国際交流基金
http://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/domestic/2018/04-01.html


Text: Chie Sumiyoshi Edit: Kaori Shimura

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