シュリグリーの皮肉に満ちたメッセージの先に見えるものは?

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デイヴィッド・シュリグリー「ルーズ・ユア・マインド」の展示風景、2015、カバーニャス文化学院(メキシコ、グアダラハラ) Photo: Marcos García

 一方、デイヴィッド・シュリグリーは、いかれた社会制度や人物をいかれたセンスで徹底的にバカにしてみせる“伝統的な”英国式のユーモアを踏襲した作家だ(モンティ・パイソンもバンクシーも『ダウントン・アビー』も、この作法によって単なるコントやグラフィティ、時代劇と一線を画す)。

 ガーディアン紙などの新聞や雑誌に政治諷刺画を寄稿し、マンガやグッズがカルト的な人気を誇る一方、現代美術の分野でも国際的に評価され、2013年には英国を代表する芸術家に与えられるターナー賞にもノミネートされた。日常にひそむ些細な違和感や隠蔽された不条理さを丁寧につまみ上げ、英国人ならではのブラック・ユーモアでさらりと描写した作品で知られている。

 開催中の個展では、ブラーのMVで一躍注目を集めた手描きアニメーションや動物の剥製の立体作品など、美術とポップカルチャーの境界を笑い飛ばしてきたシュリグリーの縦横無尽な活動を紹介する。なかでも、根強い人気のあるドローイングを圧倒的なボリュームで見せる展示は挑発的ともいえる。油断し、弛緩していた危機意識にじわじわ滑り込むナンセンスなツッコミの連発は、乾いた笑いと曖昧な後味を残していく。

 このほか、2016年秋からロンドンの名所トラファルガー広場で展示されている、異様に長い親指を突き立てて「いいね」する7mのブロンズ彫刻《リアリー・グッド》のバルーン版を世界に先駆けて初公開している。本展のタイトルは「Lose Your Mind」(正気を失え)。捨て台詞にも聴こえる挑発的な命令形は、これまでの彼の制作態度になかった非常に強い抵抗感を示す。この、いかれきった仮想世界でまさか正気で“いいね”してるんじゃないよね!?という皮肉に満ちたメッセージだ。英国のブレグジットと時を同じくして、対立と排斥の様相を露わにした世界の様相に対し、もう一本の指を立てる役目は観客である私たち自身に委ねられている。


長島有里枝「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」
会期:~11月26日(日)
場所:東京都写真美術館
https://topmuseum.jp/

デイヴィッド・シュリグリー「ルーズ・ユア・マインド-ようこそダークなせかいへ」
会期:~2018年01月21日(日)
場所:水戸芸術館現代美術ギャラリー
http://www.arttowermito.or.jp


Text:Chie Sumiyoshi