観る者の意識を幻惑する、髙田姉妹の白日夢の世界

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髙田安規子・政子《In the Wardrobe》2017年 部分

 東京都庭園美術館で開催中の展覧会でも「夢」はキーワードだ。

 双子のアーティストデュオである髙田安規子・政子の作品では、主が眠っている真夜中にせっせと働く小人たちの仕業か、クローゼットのドレスの刺繍から花の蕾や雪の結晶が成長し、書斎の棚にミニチュアの本や梯子がこっそりと培養される。彼女たちが得意とする、スケールや精密さのギャップが意識を撹乱させる白日夢の世界だ。

 タイのアラヤー・ラートチャムルーンスックの有名な映像作品《タイ・メドレー》では、「眠り」と「夢」は霊的な世界の底深くに沈んでいる。殺風景な霊安室に眠る身元不明の人々の遺体に、作家自身が色鮮やかな花柄の布をかけ、枕元で恋物語を歌いかける。アジアの家庭ならどこでもありそうなチープでデコラティブな花柄は、死者と生者、聖と俗、夢と現実の境界をひらりと超え、迷える死者の魂をどこか次の場所へと運んでいくかのようだ。

 東京都庭園美術館は旧朝香宮邸の歴史的建造物である。明治時代に宮家を創立した鳩彦王はフランス留学中に交通事故に遭い、看病のため渡欧した允子内親王とともに長期滞在することとなる。当時大流行したアール・デコの装飾芸術に魅了された夫妻は、自邸の設計にフランス人芸術家を起用し、日仏から招いたデザイナーや技師の力を結集して、様式美を極めた空間を建造した。その贅を尽くしたインテリアは隅々に至るまで、この館に暮らした主や使用人の気配をうかがわせる。本展もまた遺された装飾に寄り添い、夢枕に現れても不思議ではない強い愛着や鮮やかな記憶を再現する。


「ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー」
会期:~2018年3月11日(日)
場所:金沢21世紀美術館
http://www.kanazawa21.jp

「装飾は流転する 『今』と向きあう7つの方法」
会期:~2018年2月25日(日)
場所:東京都庭園美術館
http://www.teien-art-museum.ne.jp/


Text: Chie Sumiyoshi

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