森美術館で開催予定の「STARS展:現代美術のスターたち-日本から世界へ」では、草間をはじめとする6人の「旗手」の創作が、世界の美術史のどのような系譜に連なり、いかに評価されてきたのかを、旧作から最近作まで、長きにわたる活動を通して見せてくれるだろう。

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日本館展示風景(撮影:ArchiBIMIng /写真提供:国際交流基金)(参考図版)

 アーティストが国境や文化を超えて、国際的なアートシーンに迎えられていく過程で、もっとも影響力を持つステージのひとつがヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展だ。1895年の創設から120年以上の歴史を重ねる、2年に一度の国際展である。

 その主会場のなかで各国のナショナルパビリオンのひとつに名を連ねる日本館は、アーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)を擁する石橋財団の創設者・石橋正二郎が寄贈し、1956年に開館した。この歴史的なつながりから、2019年の日本館の展示がこのたび同館で帰国展として再構成されることとなった。

 本展「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」では、キュレーターおよび美術家、作曲家、人類学者、建築家という4つの異なる分野の専門家たちの協働により、ひとつのインスタレーションがかたちづくられた。

 起点となるのは、アーティスト下道基行が数年前から調査を続けてきた、世界各地の大津波で海底から陸に運ばれた巨石「津波石」の映像作品だ。ときに信仰や伝承の対象となり、ときに渡り鳥のコロニーや昆虫の棲み家にもなるこれらの巨石を、広場あるいはモニュメントに見立てた展示空間の中央には、大きな救命ボートを思わせるバルーンが設置されている。そこに腰かけて映像を観ているとやがていくつかのことに気づくだろう。まず、会場に充満する音色が目の前に吊り下がった自動演奏リコーダーから奏でられていること。さらに、楽器を鳴らしている空気は座っているバルーンから吹き込まれているらしいこと。そして、壁面に古代遺跡のように神話が刻まれていること。

 自然物と人工物が互いに混ざり合い、連関するその景観から、観る人は何を捉えるだろうか。本展「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」は、人間がいかに動植物や土地と関わり、生きていくことができるかを問うている。科学技術や医療の進化にもかかわらず、地球上のあらゆる生物・非生物はたえず自然災害や人災に脅かされてきた。人間による自然破壊と生態系の変化がその要因ともいわれる「コロナ禍」を体験している私たちは、ポストコロナの世界での「共存」と「共生」の可能性が土地の文化と人々の知性に委ねられていることをもう知っている。この危機を乗り越えた後にあらためて観る本展は、きっとより鋭く、深く胸に刺さることだろう。


「STARS展:現代美術のスターたち-日本から世界へ」
会期:未定
会場:森美術館
www.mori.art.museum


「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 Cosmo-Eggs|宇宙の卵」
会期:開催日未定~6月21日(日)予定
会場:アーティゾン美術館
https://www.artizon.museum/



Text: Chie Sumiyoshi Editor: Kaori Shimura

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