「フランスの最も美しい村」とは

1982年に、フランスのコロンジュ=ラ=ルージュ(コレーズ県)にて設立された協会。フランス各地に存在する、良質な遺産を持つ小さな村の観光と経済活動を促進することを目的とし、158の村が認定されている(2018年7月現在)。人口2000人以下、最低2つの史跡建造物や自然遺産があり、観光客受け入れの態勢が整っていることなど、厳しい選考基準を通った魅力的な村々が加盟している。

コートダジュールのロマンティックな山の村を巡る

 フランスの最南東、イタリアとの国境近くに、サンタニェスという村がある。言い伝えによると、古代ローマの王女アニェスが旅の途中で嵐に遭い、この村の洞窟に避難し、守護神の礼拝堂を造っていったというのが、村の名前の由来のようだ。標高800メートルの山沿いにあり、地中海沿岸部の村ではヨーロッパでもっとも高いところに位置している。

 マントンから車で約11キロ、くねくねした険しい山道を延々と上っていく。途中からは眼下に瑠璃色の地中海、上方の山の中腹に教会の三角屋根が見えてくる。さらにずっと上方には古い城跡が望め、そのコントラストに驚かされた。

 村の歴史をひもとけば、ローマ時代にすでに要塞が造られ、12世紀にサヴォワ家が城を建設したという。そして1932~38年にはイタリアとの国境を守る南の要塞になっていた。

 静けさの漂う村に入ると、迷路のように入り組んだ石段やごつごつとした石造りの壁が続く。そのあちこちに赤や白の小花が咲き乱れて、全体がプロムナードのような趣にあふれている。澄んだ山の空気とかすかに香る花の匂いで、不思議とのんびりした気分になった。

海と山のパワーが感じられる村の魅力

 「パノラマのテラスあり」というレストランの看板に惹かれて入ったのは、村で一番活気がありそうなレストラン「Le Logis Sarrasin」。テラスからは向かい側に高い山脈の全景が見渡せ、爽快な気分になる。サービス係の男性が「この村は、海と山が同時に味わえるのが魅力だよ」と、自慢げに声をかけてくれた。

 レストランでは、ウサギのハーブ風味やホロホロ鳥のシャンピニオン・ソースに舌鼓。都会では考えられないほどの安さに驚かされた。訪れた季節は、春。地中海沿岸のサントロペ産のフルーティな赤ワインの酔いが、ほんのりまわってくるとともに、やさしい光と風のなかで、心身にパワーが湧いてくるようだった。

パリからのアクセス

パリ・リヨン(Lyon)駅からマントン(Menton)駅まで、TGVと在来線Terで約6時間40分。そこから車で約11キロ。バスの場合は「ZEST BUS」の10番「Ligne 10」を利用。本数は季節とバカンス時期によって変わるが、通常は月~土曜は1日に6本、日曜・祝日は1日に4本出ている。
http://www.zestbus.fr/Pratique/Lignes-et-horaires

旅のヒント

パリから飛行機でニース・コートダジュール(Nice Côte D'Azur)国際空港まで、約1時間25分。あるいは、パリ・リヨン駅からニース・ヴィル(Nice-Ville)駅まで、TGVで約5時間50分。ニースからは車でA8に入ってマントン方面に向かい、59番出口からD22(Route de l’Armée de Alpes)の山道を行く。所要時間は約50分。

粟野真理子
大学卒業後、本田技研に勤務。その後、編集プロダクションで編集や海外取材を経験後、渡仏。パリに20年以上在住し、旅からモード、アートまでを網羅するジャーナリストとして活躍。『フィガロジャポン』や『マリ・クレール』日本版(アシェット婦人画報社 現ハースト婦人画報社)などで、フランスやモロッコなどを巡る旅の特集や連載記事を執筆してきた。現在も『DAZZLE』や『家庭画報』『Pen』をはじめ、ハイクオリティ・マガジンや機内誌、企業の会員誌などで取材や執筆活動を行っている。本連載のベースでもある近著に、『パリから一泊!フランスの美しい村』¥1,800(集英社)。ブログ:https://mmemariko.exblog.jp/

Photos : Grammy Sauvage Text:Mariko Awano  Edit : Kao Tani


関連記事

「フランスの美しい村」 Vol.8 アイノア(バスク)

「フランスの美しい村」 Vol.7 ゴルド(プロヴァンス)

「フランスの美しい村」 Vol.6 エギスハイム(アルザス)

「フランスの美しい村」 Vol.5 ノワイエ・シュル・スラン(ブルゴーニュ)

「フランスの美しい村」 Vol.4 ルシヨン(プロヴァンス)

「フランスの美しい村」Vol.3  ピアナ(コルシカ島)

「フランスの美しい村」Vol.2 ラ・フロット・アン・レ(ポワトゥー・シャラント)

「フランスの美しい村」Vol.1 ムスティエ・サント・マリー(プロヴァンス)