「フランスの最も美しい村」とは

1982年に、フランスのコロンジュ=ラ=ルージュ(コレーズ県)にて設立された協会。フランス各地に存在する、良質な遺産を持つ小さな村の観光と経済活動を促進することを目的とし、158の村が認定されている(2018年7月現在)。人口2000人以下、最低2つの史跡建造物や自然遺産があり、観光客受け入れの態勢が整っていることなど、厳しい選考基準を通った魅力的な村々が加盟している。

美食&スケッチ旅行に出かけたくなる村

 ブルゴーニュの辛口白ワインで知られるシャブリ村から南へ約20kmのところに、ノワイエ・シュル・スランという小さな村がある。スラン川の畔(ほとり)に形成されたこの村は、12世紀から15世紀にかけて堅牢な城壁やいくつものドンジョン(主塔)が造られ、ノワイエの領主が権勢をふるっていた。16世紀末に、アンリ4世によって城砦の取り壊しの命が下されたが、今も城壁の一部が残っており、その中に中世から時が止まったままのような佇まいの街並みが存在している。

 入り口のアヴァロン門をくぐると、石畳の小道が続き、木骨組(もっこつぐみ)の古い建物が立ち並ぶ。石壁や柱には人の顔などの木彫のレリーフが飾られ、それを見て歩いているだけでも楽しい。民家や店の窓辺や古い井戸の周りには、白や赤、紫、ピンクの草花が咲き誇り、風景に彩りを添えていた。小さな村なので、1時間もあれば回れてしまう。

 また、ナイーヴ・アート(素朴派)のコレクションがあるノワイエ美術館を訪れたり、陶器工房の店にも立ち寄るのもおすすめだ。どこも可愛い看板が掛かっていて、その素朴な作品に出合うたびに、ほのぼのとした気分になってくる。

 村にはマルシェ(市場)が立ち、野菜や肉、魚のほか、雑貨などを売る露店も出ていて、住人たちが日々の買い物をしていく。その中に交じって、ブルゴーニュの食材に触れるのも旅のいい思い出に。また、11月には「トリュフ祭」があり、香りのいいトリュフが出回るので、それを目的に来るのもいいだろう。

 城壁の外は川沿いにプラタナスの大きな木が茂り、並木の間から円錐形の屋根が特徴のドンジョンが見え隠れし、独特の風情がある。周辺はブドウ畑とクルミの木、サクランボの木などが植えられていて、思わずスケッチしたくなる光景。田舎ならではの豊かさがひしひしと感じられる。

ブルゴーニュの名物料理とワインに酔いしれる!

 村の中で、ひときわ活気があるのがシャルキュトリー(食肉加工製品を扱う店)とレストラン、ワインショップを経営する「メゾン・パイヨ」だ。店頭にグリュイエールチーズが練り込まれたシュー皮のグジェールや、パセリと豚肉のゼリー寄せのジャンボン・ペルシエなどが並べられ、食欲をそそられる。

 店の裏側にあるレストランのテラス席で、エスカルゴのパイやクリーミーなチーズ、エポワースを賞味。お酒はブルゴーニュで唯一のソーヴィニヨン・ブランのワイン、サン・ブリを。ニンニクとバターが香ばしいエスカルゴと、キレのある酸が特徴の黄金色のワインで上機嫌になった。

パリからのアクセス

パリ・リヨン駅からトネール(Tonnerre)駅まで、電車で約1時間50分。駅からは路線バスの5番に乗り、ノワイエ(Noyers)で下車、約40分。タクシーの場合は約20kmで、約30分。

旅のヒント

トネール(Tonnerre)駅から車の場合は、D944でイルーエール(Yrouerre)に向かい、イルーエールを通過したらD86で南下。所要時間約30分。

粟野真理子
大学卒業後、本田技研に勤務。その後、編集プロダクションで編集や海外取材を経験後、渡仏。パリに20年以上在住し、旅からモード、アートまでを網羅するジャーナリストとして活躍。『フィガロジャポン』や『マリ・クレール』日本版(アシェット婦人画報社 現ハースト婦人画報社)などで、フランスやモロッコなどを巡る旅の特集や連載記事を執筆してきた。現在も『DAZZLE』や『家庭画報』『Pen』をはじめ、ハイクオリティ・マガジンや機内誌、企業の会員誌などで取材や執筆活動を行っている。本連載のベースでもある近著に、『パリから一泊!フランスの美しい村』¥1,800(集英社)。ブログ:https://mmemariko.exblog.jp/

Photos : Grammy Sauvage Text:Mariko Awano  Edit : Kao Tani


バックナンバー

「フランスの美しい村」 Vol.4 ルシヨン(プロヴァンス)

「フランスの美しい村」Vol.3  ピアナ(コルシカ島)

「フランスの美しい村」Vol.2 ラ・フロット・アン・レ(ポワトゥー・シャラント)

「フランスの美しい村」Vol.1 ムスティエ・サント・マリー(プロヴァンス)