「フランスの最も美しい村」とは

1982年に、フランスのコロンジュ=ラ=ルージュ(コレーズ県)にて設立された協会。フランス各地に存在する、良質な遺産を持つ小さな村の観光と経済活動を促進することを目的とし、158の村が認定されている(2018年7月現在)。人口2000人以下、最低2つの史跡建造物や自然遺産があり、観光客受け入れの態勢が整っていることなど、厳しい選考基準を通った魅力的な村々が加盟している。

愛らしい絵本のような風景が広がる村

 アルザスのコルマールから南西に約5km下ったところにあるエギスハイムは、13世紀に造られた要塞の内側に、エギスハイム城を中心とした渦巻状の村が成り立っている。ローズピンクやカナリーイエローといったカラフルな壁や窓枠をもつ、木骨(もっこつ)のコロンバージュ様式の家が立ち並ぶ様子は、まるでおとぎの国のようだ。

 この村は、4世紀にローマ人が初めてぶどうの苗を植えた地で、ここがアルザス・ワイン発祥とされているそうだ。また、11世紀にローマ教皇を務めた聖レオン9世(元エギスハイム伯爵)の生誕地でもあり、広場の泉には彼の彫像が立っている。さらに、「花の村(Village Fleuri)」にも認定されていて、1989年には花のナショナル・グランプリで最優秀賞を受賞している。春や夏に訪れたら、可憐な花々に彩られた、別の美しさを見ることができるだろう。

 私が冬の時期を選んで訪れたのは、この村のマルシェ・ド・ノエル(クリスマス・マーケット)を覗いてみたかったからだ。アルザスの中心都市であり、世界遺産の街、ストラスブールの大きなクリスマス・マーケットも訪れたことがあるけれど、こんなに小さくて可愛い絵本に出てくるような村なら、きっとこの時期も素敵に違いないと思ったのだ。

 実際に訪れると、私がイメージしたとおりで、村の広場や迷路のような小道に立つ家は、どれも美しくクリスマスのデコレーションが飾られ、メルヘンの世界に迷い込んだよう。さすがにレンガと石造りの村は底冷えする寒さだが、そこにも冬でしか味わえない趣があった。まずはホットワインで温まり、小道に面するレストランでランチを。アルザスの郷土料理、薄いピザのようなタルト・フランベは、釜焼きのシンプルな料理でぱりっと香ばしい。ノスタルジックな冬の味覚だ。

アルザスならではのクリスマスを堪能

 アルザスはクリスマスツリー発祥の地でもあり、1521年ごろからモミの木や枝を使用したツリーの記録が残るそうだ。サンタクロースは、フランス語でペール・ノエルと言い、聖人のサン・ニコラ(聖ニコラウス)がモデルになっているという。

 そんなアルザスの村々では、毎年の儀式として、クリスマス、つまりキリスト誕生(降誕祭)の4週間前の日曜日からクリスマスを準備する期間(待降節)があり、クリスマス・リースやクレッシュと呼ばれるキリスト誕生の場面を表す馬小屋の飾りなどで飾られる。

 エギスハイムの村も同様に、広場には大きなクリスマスツリーが飾られ、通りや建物にも競い合うようにデコレーションが施され、それをひとつひとつ見て歩くのは実に楽しい。広場のクリスマス・マーケットでは、クリスマスの祝宴に食べるフォアグラやクリスマス菓子のブレデル、パンデピス、そしてキャンドルやプレゼント用の雑貨などが売られ、村がいちばん華やぐ季節となるのだ。

パリからのアクセス

パリ・東駅からTGVでストラスブール(Strasbourg)駅まで、約2時間20分。ストラスブールからTERでコルマール(Colmar)駅まで約30分。コルマールの駅から村までは、バスで約20分(日曜は運休)。タクシーの場合は約15分。

旅のヒント

ストラスブールから車で高速道路A35を南下し、コルマールを通過。サント・クロワ・アン・プレンヌ(Sainte-Croix-en-Plaine)で高速を降り、D1に入ってエギスハイムに向かう。所要時間約1時間。

粟野真理子
大学卒業後、本田技研に勤務。その後、編集プロダクションで編集や海外取材を経験後、渡仏。パリに20年以上在住し、旅からモード、アートまでを網羅するジャーナリストとして活躍。『フィガロジャポン』や『マリ・クレール』日本版(アシェット婦人画報社 現ハースト婦人画報社)などで、フランスやモロッコなどを巡る旅の特集や連載記事を執筆してきた。現在も『DAZZLE』や『家庭画報』『Pen』をはじめ、ハイクオリティ・マガジンや機内誌、企業の会員誌などで取材や執筆活動を行っている。本連載のベースでもある近著に、『パリから一泊!フランスの美しい村』¥1,800(集英社)。ブログ:https://mmemariko.exblog.jp/

Photos : Grammy Sauvage Text:Mariko Awano  Edit : Kao Tani


バックナンバー

「フランスの美しい村」 Vol.5 ノワイエ・シュル・スラン(ブルゴーニュ)

「フランスの美しい村」 Vol.4 ルシヨン(プロヴァンス)

「フランスの美しい村」Vol.3  ピアナ(コルシカ島)

「フランスの美しい村」Vol.2 ラ・フロット・アン・レ(ポワトゥー・シャラント)

「フランスの美しい村」Vol.1 ムスティエ・サント・マリー(プロヴァンス)